kanehen

金属をたたいてつくる人 の忘備録です

検察庁と裁判所と刑務所

夫は検察事務官という仕事をしている。「検察」は裁判とかで犯人を裁判にかける側でドラマとかで見るアレな感じで、「事務」というのはまぁ、事務仕事なんだろうし、「官」は、、、まぁ公務員てことだ。要するに、検察官の補助をするらしい。

付き合い始めにいろいろ聞いたし、まぁ!なんて縁遠くて、それでも社会が回ってゆくためには必要な仕事だとざっくり理解。その後、夫のお友達の同じ仕事の方々にもちらほら会ったけれど、みなさん優しい方ばかり。こういう人たちが淡々と仕事をしてくれるおかげで日々過ごせるのだろうなと。


で、だいぶ前になったが、子供の夏休み。お父さんの職場見学を宿題の「いち研究」にするということになり、夫の勤務先の検察庁とそれに関係のある裁判所と刑務所を見に行くことになった。どうやら検察庁は事前に申し込むと広報官の方に案内していただける模様(同日に高校生も見学していた。)。裁判所は常に入口は解放されているそうである。刑務所は流石にそうはいかず、外から壁を眺めただけだけど。

検察庁はとりあえず、事務っぽい感じ。取調室はとにかくグレー、捕まっている人が取り調べを受けたりするので、余分なものはないがらんとした部屋に、机と椅子が3つ。取り調べを記録するカメラと調書を作る検察事務官の使うPCとプリンタなど。棚という棚はほぼスチール製で鍵が付いている。机の上には被疑者用の手錠などが見本で置いてあった。

それから、虐待を受けたお子さんなど配慮の必要な人から話を聞くための部屋。壁紙にかわいい色がついてて、椅子がふかふかのソファーになっていて、ちょっとだけ家っぽい。TVカメラを通して記録しつつ、隣の部屋のモニターあって関係者(児童相談所、警察、検察)が集まって一度で話を聞けるようになっている。質問を受ける人に負担がかからないよう、いろんな役所で何度も話さなくて済むように、だそうだ。

他にも基本的に相手がいて、それを事務手続きするのが事務官の仕事らしいので、机とパソコンと、机にはコロナ対策の衝立と、書類の山。という部屋がたくさんあるらしかった。そして、地下にはそれらの書類が大量に保管された記録保管庫、押収した証拠物を一時保管しておく金庫などもあって見せてもらった。地方検察庁の一番偉い人の部屋もご不在だったのだけど、許可がもらえたそうで入れてもらった。うん、ドラマっぽい。

で、裁判所。裁判の傍聴は自由にできるのはなんとなく知っていたが、こんなにフリーだとは。もしかして暑いから涼みに来ているだけなのでは?と思ってしまうような新聞片手のおじさんとか、傍聴が趣味なのか?と思ってしまう若いカップルもいた。もちろん、その裁判の関係者もいるのだろうと思うけれど。

交通事故の判決と、詐欺の判決と、窃盗の裁判の冒頭手続き(初めのところ)を見た。交通事故の人は普通にその辺にいた人が時間になったら呼ばれてた。詐欺と窃盗の人は拘置所から手錠腰縄で、看守の人に連れられて、裏のドアから入って、法廷で手錠を外されていた。

専門用語というか、独特の言い回しが多くて子供にはまだ難しかったと思うが、間違いがあってはいけないし、一つ一つを懇切丁寧に確認しながら進んでゆく。判決の2つについては、いわゆる被告の「最後に言いたいことはありますか?」と聞くのがあって、「もうしません」みたいなのがあり「判決!」な感じ。
事故の人も何故か同じような違反を繰り返していて、普通に考えると意味がわからないし、詐欺も窃盗も組織的なもので、被告は末端でちっともお金を手にしていなかったようだ。楽してお金が手に入ると思ったり、脅されたり、なにかしら考えが足りない結果、犯罪に手を染めて、重い判決を受けている。

そういうことになる大人がいる、というの子供は理解できたのだろうか?なんなら私自身もうまく飲み込めない、解るとは言えない。交通事故の人は執行猶予がついたけど、詐欺の人は執行猶予もつかなかったので実刑になった。塀の中、刑務所に入るという、さらに私の日常には理解し難い事実。

昼は市役所の食堂で美味しいカレーライスを食べ、帰り際に少し山の方にある刑務所まで移動して、塀の外から眺め見てみて、近くの団子屋でみたらし団子を買って食べた。安くて香ばしくて美味しかった。

今回の職場見学、まぁ知ってたけど、こういう仕事はなんというか、なんともやるせ無い気持ちになった。私は手仕事に救われて、ほんとうに優しい世界でくらしていると改めて思う。唯一ほっこりしたのは、検察官は法廷で使う裁判資料を風呂敷に包んでいる(みんな使ってた)のだけど、良い感じの柄でだいぶ和んだ。